天使の小部屋

アンジェリークってこんなゲームだ!

あくまで私見です。あまり信頼せず、自分の目で確かめてください。


プレイ前のイメージ

 いまさら言うまでもないことかもしれませんが、アンジェリークはいわゆる乙女ゲーのさきがけと言うべき作品です。すなわち、ごく初期に出た女性向けの恋愛シミュレーションゲームです。
 ここで大きなポイントとなるのは、女性向けという部分と、恋愛という部分です。

 女性向けのゲームってどんなものだろう、と私はこの作品をプレイするまで考えていました。
 言っちゃ悪いですが、ことさらに“女性向け”と銘打たれていると、何だかすごくひっかかるものを感じてしまいます。
 “コンピュータゲームは男のもの”という暗黙の了解があるような気がして、何だかおもしろくないものを感じてしまうわけです。

 実際問題として、コンピュータゲームをプレイしていると、ジェンダーの問題に引っかかってくるようなシーンはけっこうあるように思います。
 まあ、確かに男性のプレイヤーのほうが未だに多数派であるのだろうから、そのニーズに合わせて作品を作っていこうとするならば、価値観が男性中心になりがちになることもある程度は仕方のないことなのかもしれません。そういった意味で、女性が主体となってプレイすることのできるゲームが増えることは歓迎すべきことだと言えるでしょう。

 また、恋愛シミュレーションというものに対しても、実はけっこう偏見を持っていました。
 欲求不満の代償行為とか、擬似恋愛とか、そういった言葉が頭の中をちらついて、いまいち素直に受け入れられないのです。別にそういったものがいけないというわけではないのですが、どうも生身の女(男)と付き合えないビューティフル・ドリーマーというようなイメージがあり、「何となくヤダ」と思ってしまったわけです。

 で、実際に「アンジェリーク」に手を出してみて、そういったイメージはかなり払拭されました。
 女性向けということに関しては、「いや、コレ、男がやってもたぶん楽しくないよ(笑)」というあたりで納得。
 恋愛シミュレーションに関しては、キャラ萌えとはどのようなものであるかを充分に教えてくださったすばらしいソフト(爆)、だったわけです。

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禁断の愛!?

 アンジェリークの面白さがどのあたりにあるのかをつらつらと考えていたのですが、その要素の一つとして、「じつはこの恋愛は、本来禁じられたものである」というところに、キーポイントがあるのではないかということに気づきました。

 意外に思われるかもしれませんが(あるいは当たり前過ぎることなのかもしれませんが)、実は、女王候補と守護聖の恋愛は、本来は禁断の愛であるのです。
 プレイヤーはこのゲームに恋愛シミュレーションとして取り組んでいますし、守護聖様たちもけっこう積極的にアプローチをかけてくるのでつい忘れがちになってしまうのですが、考えてみれば、女王候補と守護聖がラブラブになってしまうのは本来はご法度のはず。
 というのも、守護聖様達の目的はあくまで「未来の女王となるべきものを育て、守り、補佐すること」であり、決して彼女らと恋愛することではないのです。むしろ、そのような関係に陥ることは望ましくないことなのです。
 女王候補にとっても守護聖にとっても、この恋愛は「道に外れた行為」であり、恋を全うするためにはそれまでのおのれの立場をすべて棒に振ってしまう覚悟が必要となります。しかし、いやだからこそ、この「恋愛」には大きな意味が出てくるのです。

 何しろ「障害」や「禁忌」の存在する恋愛は、そういったもののない恋愛よりも燃えやすい、という大原則があります。
 有名な恋愛物語、例えばロミオとジュリエットやトリスタンとイゾルデなどを見ても、あるいは昼メロなどを思い出していただきたいのですが、「恋しちゃいけない相手と恋愛する」パターンの物語が実に多いのです。
 こういった障害・禁忌の種類はいろいろありますが、大きく分けると、不倫と近親相姦と社会的な障害(家が対立しているとか、身分が違うとか)の3パターンに収まるように思います。加えるならば、おそらく同性愛(BL)もこういう禁忌と類似した側面を持っているように思います。
 どのタイプに於いても、社会的に認知されないがゆえに禁忌となっているわけなので、すべて社会的禁忌と考えてもいいのでしょうが、付加される意味合いがそれぞれに少しずつ異なっているので、分けて扱ったほうがいいように思います。

 ではなぜ「禁忌」のある恋愛は燃えるのか?
 それはまず、禁じられているがゆえにますます燃えあがるという人間のどーしよーもない性(さが)と、禁じられてもなお貫ける思いこそが「本物」であるという「純愛」への憧れ、という2つの要素があるためではないでしょうか。
 「アンジェリーク」が女性向け恋愛シミュレーションであるゆえんは、きっと後者ゆえなのではないかと、私は感じました。

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オンナノコの夢

 というのも、アンジェリークの恋愛は、ある意味、女の子の夢、理想です。
 守護聖様たちはそろって美形で、親密度さえ上がれば甘〜いセリフを吐いてくれます。
 まあ、それだけでもけっこう楽しかったりするわけですが、何が一番いいかといえば、とにかく自分のことを大切にしてくれるという感じがたまらないのではないでしょうか。
 主人公は宇宙の運命を司る女王になるかもしれない存在=女王候補であり、彼女とライバルを一人前に育て上げることが、守護聖様たちの目下の急務であるわけです。ですから、守護聖様たちは本質的に主人公(=私)をものすごく大切に扱ってくれます。ただ、親密度が低いとかなり邪険に扱われることもありますが。その“大切に取り扱ってくれる感じ”は任務ゆえか、単なる友情か、はたまた恋愛感情なのか、そのあたりがけっこう微妙ではあるのですが。
 で、「女の子って、こういうふうにまともに男の人に向き合ってもらう喜びにけっこう餓えてるんじゃないかなあ」、と私は感じました。

 何と言うか、女の子の憧れている恋愛って、あんまり生臭いものではないように思います。
 人によるかもしれませんが、例えば「百人斬り」をめざす恋愛シミュレーションとかって、あまり女性向けには作られそうもないような気がします。
 まだまだ女性の性の解放が進んでいないせいだ……、という可能性は無視できないのですが、(前にも書いたが、だいたいコンピュータゲームは基本的にはいまだに男性上位の市場ですので)、それ以上に、その手のゲームに対する女性の需要自体がどのくらいあるのか、けっこう疑問です。
 というのも、どうも女性が恋愛に求めているスタンスって、必ずしもセックスじゃないような気がするので。  このあたりは、異論があるかもしれませんが。

 というのも、情欲の対象の「女」として扱われることは、女の子にとってそう珍しいことではないわけで、むしろ、そういうもの抜きでも大切にされる体験のほうが、貴重で幸せなものとなるのではないかと思うからです。
 まったく「女扱い」されないのはそれはそれでさびしいですが、「女扱い」しかされないのは、けっこう嫌なものです。「女」としての私ももちろん私の一部ですが、そこだけを拡大されてしまうと、どうも「一人の人間」としての私が忘れ去られてしまうような気がしてしまって悲しくなります。

 で、守護聖様との付き合いはと言えば、あんまりセクシャルすぎる要素はなく、しかしやはり「恋愛」(しかも禁断の)というポイントはきっちり押さえています。
 なにしろ、途中の過程では、守護聖様を自室に連れ込んでも、その手の間違いは起こってないようなんですよね。
 女王候補というものは、「大切にしなければならないが、本来は恋愛対象にしてはいけない存在」であるため、最初から単純な恋愛の対象としてはブロックがかかっているのでしょう。であるからして、恋愛を成立させるには「禁忌を破るだけの決意」を必要とした「純愛」が展開されることになります。
 こういったシチュエーションのお膳立てがあるからこそ、「アンジェリーク」はオンナノコの夢にマッチした作品になっているのではないでしょうか。

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written by S.Kirihara
last update: 2015/04/08
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